株式会社 ジャッド Judd. Co., Ltd. note

#クールチョイス鹿児島2018

安長瑠人の“エコ住宅”探訪

<エコ住宅>
建築家の自邸への訪問
今年の春、建築家として独立された金子健太郎さんの自宅は、12畳用のエアコン1台だけで家全体の空調を賄っているという。現在、建築家を目指し日々勉強している身としては、その存在が気になり鹿児島市のある団地を訪ねることにした。教えてもらった住所を入力したナビを頼りに住宅街を進むと、いわゆる建売の住宅とは違う雰囲気を持った建物が見えてきた。おそらくあの建物であることは間違いないだろう。しかしその家は、ぼくが想像していたエコ住宅とは、ずいぶんイメージが違っていた。
訪問した金子さんの自宅は木造の二階建て。落ち着いたグレーの外装と木製の庇のコントラストが美しく、建設から約3年が経ち、存在感がありながらも新築のよそよそしさが無くなり、ちょうど周りの景色と馴染み始めていた。少し重さのある木製のドアを開け建物の中に入ると、真夏独特の蒸し暑さは感じなくなった。
リビングに進むと、庭に面して広く取られた窓から見えるシマトネリコの緑がまぶしく、学生の頃から少しずつ集めたという古い家具には天窓から取り込まれた柔らかい日光が差し込んでいた。これだけ光を取り込んでいるというのに、嫌な暑さは無い。ただ本当に居心地の良い住宅がそこにあった。ソーラーパネルを確認しようと2階に上ると、ようやく階段の壁に稼働しているエアコンを見つけることができた。やはりこの12畳用のエアコン1台だけで、家全体の空調を賄っているようだ。曇っているとはいえ、真夏の、しかも真昼の訪問であるはずなのに、動いているのはエアコン1台とは、何か魔法のようなものだと感じた。
見えないところにお金をかける
ソーラーパネルの存在感を消すために、発電効率を担保できる角度を保持しながら、屋根勾配を最大限に下げるといった建築的な意匠にも興味が湧いたが、断熱材や換気システムといった、見えないところにこそワンランク上の設備が導入されていることが興味深かった。そして、基礎さえしっかり押えておけば、モノの取り入れ方が自由になることも教えてもらった。例えば、省エネのことだけを考えれば、照明は基本LED照明を用いるが、リビングのようなリラックスしたい場所には、温かい色味を持つ白熱灯をあえて取り入れる。熱効率をしっかり考えた上で、全体的な消費エネルギーを抑える。そして少し非効率であっても感覚的な部分には、無理をせず、自分のこだわりを取り入れる。効率としての価値と感覚としての価値。その選択のバランスをとても魅力に感じることができた。
選択するのは住み心地
単純に低炭素化の促進や光熱費等が抑えられるからでは無く、「住み心地」が格段に良くなるからエコ住宅を選択する。その選択こそが結果、地球環境に優しいものへとつながっている。今回建築的な意匠だけではなく「見えないところから生まれる居心地のよさ」からも、あたらしい視点を学ぶことができた。ぼくもいつかこのような住宅を設計できるよう、また日々、建築学を精進していくことだろう。

エコ住宅とは?
「エコ住宅」とは、環境にも配慮しながら、
住み心地も格段に良くなる住まい。
再生可能な木材を使うこと、長持ちすること、冷暖房負荷をゼロに近づけること、照明・給湯エネルギーを減らすことなど、「エコ住宅」には様々な要素があります。
今回は、省エネルギー性についてより考え設計しました。特に気を使ったのは、建物外部との断熱性・気密性をしっかり高めるということ。そうすることで、家自体の保温効果が高くなり熱放出が少なくなります。あわせて建物内の各部屋の空気の循環を良くすることで、気温・湿度が一定となりやすく、年間を通してどの部屋でも快適と感じる基礎環境を作ることができます。その結果、より少ないエネルギーでの空調管理が可能となるため、光熱費も抑えることができます。加えてソーラーパネルを搭載することで、自然の力を利用して家で使うエネルギーを賄えたり、余った電気を電力会社に買い取ってもらうことで、年間を通して概ね電気料をゼロにすることできることもポイントです。
「エコ住宅」とは、環境にも配慮しながら、住み心地も格段に良くなる住まい。エコ住宅の要素を取り入れ設計したこの家に住みながら、しみじみそう感じています。

取 材/安長 瑠人
協 力/金子 健太郎


2018年10月4日 発行
発  行/ 鹿児島市 環境政策課
鹿児島市山下町11-1
TEL 099-216-1296

編  集/ 株式会社ジャッド
清水隆司、馬場拓見
デザイン/ 株式会社ジャッド
イラスト/ オカタオカ
運営協力/ 株式会社KCR

Photo by 南修一郎(p04-05)、奥敬志(p02-03、p08)、磯畑弘樹(p12-13)
協  力/ 鹿児島大学広報センター、本田 豊洋(鹿児島大学 法文学部 准教授)
*この冊子の取材に係る情報は2018年発行時点のものです。